アニメ「君と逢える約束の場所」
"この物語が愛の世界をつくってゆく"

推薦文

映画『君と逢える約束の場所』を観て

立教大学 名誉教授 濁川孝志

 心地よい静かな感動に包まれました。

これが映画を観終えた時の素直な感想です。この映画で語られる全ての言葉はそのままある種の「マントラ」であり、僕の心に深く染み渡りました。

僕が専門とするトランスパーソナル心理学という学問領域があります。そこでは、「この世の全てのモノ、森羅万象は不可分の一体である」と説かれます。感覚として、我々には自他の区別や個々の違いが認識されますが、それは脳がもたらすある種の錯覚で、宇宙の本質は自他一体であることを哲学的に説明します。この説明は難解で中々腑に落ちない部分もあるのですが、この映画では、この深遠で幽遠な宇宙観が平易な言葉で、見事に分かり易く語られています。

すなわち、この映画が語りかける宇宙の真理とは・・・

①この世界を構成する根源的な物質である素粒子は、全て想念で出来ている。従ってこの世界は想念、つまり僕らの「想い」がその姿として投影されたものである。

②また、この世界を構成する森羅万象は根源的に一つの存在である。この宇宙の真理である「万物の一体性」を感じ取れず、個々が独立して見える「分離感」こそが諸悪の根源であり、それがひいては紛争、断絶、隔離、差別、排除などネガティブな現象を生み出している。これら全ては、分離意識からもたらされる負の想念が生み出した虚像である。

③そして、「分離意識」の対極にある意識こそが「愛」であり、僕らが心に愛の想念を描けば、それが素粒子に反映され、この世界は愛に満ちた豊かな世界へと変容する。

僕は、この映画で描かれる世界こそがこの世の真実であると信じます。自分達が永遠の存在で、かつ自他一体だと知れば一切の争いは不要で、この世は調和に包まれるはずです。人類がその真理を知らないから、今争いが起きている。そのシンプルな事実をこの映画は切々と、静かな語りで僕たちに訴え掛けます。愛の大切さを、淡々と訴え掛けます。

コロナ禍で先が全く見通せないこの時代にあって、この映画のメッセージは我々現代人が道を誤らないための羅針盤だと僕は思うのです。背景に流れるチェコナショナル交響楽団の音楽も素晴らしく、まるで珠玉のコンサートのようなこの音色を聴くだけでも十分に価値のある映画です。

もしかしたら、記憶を辿れば自分にも「約束の場所」があるのではないか・・・そんな懐かしい思いに駆られる素敵な映画でした。